Chienomi

ThinkStation P720がひどすぎるので新しいマシンを組んだ

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要点

「不快感」が問題になるワークステーション

現在、私はワークルームがB550系自作PC、寝室がThinkStation P720になっている。

もちろん、どちらもそれなりに高性能であり、あまり文句を言う余地はない。

いや、十分な性能であるとは言えない。特にP720はRX580を使用しており、CPU性能と合わせてゲームで十分な性能がなく、Radeon Software Centerからは最低限のパフォーマンスがないと言われてしまう。 それに、RX580にはVP9支援がなく、重いVP9ビデオの再生は厳しい。

だが、ゲームが(かくついたりすることはあるにせよ)できないこともなく、基本的な性能としては悪くない。 もちろん、普通のデスクトップユースにおいて性能が不足するようなことはない。 むしろその意味では、もとのとおりQuadro P400に戻せば省電力で性能を引き出せる使いやすいマシンになるだろう。

メインマシンはあるのだし、強い不満を感じているのでなければそのままでいいではないか、今はタイミングが悪いのだし、というのが普通の考えだろう。

だが、私は、価格が落ち着くまで、あるいは、次の製品がリリースされるまで、P720を使いつづけられるとは思っていない。

P720はだいたい不良

P720は当初から「USBデバイスが認識されづらい」という問題があった。 特にフロントUSBはかなり認識されづらく、使えないことのほうがずっと多かった。

この問題は、悪化しつづけている。

現在、フロントUSBは全ポート認識されない。 そして、フロントにあるSDカードリーダーも機能しない。

これだけでも相当使いづらい。 というか、致命的に使いづらい。

仕方ないのでリヤUSBを使っているのだが、リヤUSBもあまり安定していない。 認識されないということはないのだが、動作が不安定である。

また、スリープすると復帰時に(Windowsを含めて必ず)USBが動作しなくなる。

問題はUSBだけではない。 Windowsの動作はかなり不安定であり、そこそこの頻度でフリーズする。フリーズした場合強制電源断しかないが、再起動するとビープ音とともに停止する。 だが、この問題はDiagnogsisに表示されない。

また、Windows起動後、Linuxを起動するとプロセッサエラーが確認できる。 Windowsでは表示されないため、どのタイミングで発生しているのかわからないが、Windowsの不安定さがこのプロセッサエラーに起因すると考えればおかしくはない。 ちなみに、Linux使用中に同様のプロセッサエラーを確認したことはない。

そもそもP720は製品自体よくない。

まず、エアフローが非常に悪く、内部にすごく埃がたまる。 熱もたまりやすく、仕様としては8180を2基、P6000を2基搭載することができるが、とてもじゃないが熱に耐えられない。 実際、8160Tを2基、P5000を1基搭載して回していたことがあるが、無理やり冷却しないと動かなかった。

これに加え、ストレージを非常に搭載しづらく、干渉しやすいため、実際にはケースを閉じておくことが難しい。 4114, P400, M.2 SSDを使う場合は閉じることが可能だが、非常に実用性の乏しいコンピュータである。

そして、問題を解決しようと思ったのだが、有償の保証のグレードアップをしているにも関わらず、保証ステータスは無効になっており1、修理を依頼することもできなかった。

結局、P720は最初からずっと、「まともに機能しない」コンピュータであり、非常にストレスがたまっている。

もう限界だ

P720、使っていて不快すぎる。 性能の不足もあるが、USBの利用、起動、再起動といった基本的な動作に支障があるため、使っていて「不快さを意識しないでいられる」ということがほとんどない。

ストレスがたまりすぎてしんどくなった。 そこで、悩みに悩んだ末、もう一台組むことにした。

以前、「妥協なきマシン」を見積もりしたとき、およそ45万円となった。 フラッグシップモデルの一般的な価格としては30万円強といったところであったはずだから、随分と割高であることは感じる。 CPUは1〜2割という感じだが、ビデオカードが倍という価格感なので、その影響が大きいだろう。

今回は、もう少し妥当なセンを狙った。RX6900XTは必要ないということが実際に試してみてわかったので、RX6800XTに落としたのが一番大きい。 それで見積もりし直した結果、35万円ほどになった。

だが、それでも高い。最近高い買い物しすぎているから、さすがにこの金額は辛い。

諦めよう、と思ったのだが、やっぱりその日、P720を使って、不安定すぎる動作に納得できなかった。

そしていいアイディアを思いついた。

今高いのはビデオカードであるが、ビデオカード自体は余る傾向にある。 というのは、P720がRX580を使っているが、ゲームしないのならP400に戻すのが望ましい。 そうすると、RX580の行き場がない。

もちろん、ゲームにはRX580が足りないという話だが、ワークルームにあるマシンをそのまま持ってくるとRX5700XTが載っている。 このマシンで4kゲームが問題なくできることを確認しているので、現状の寝室でのゲームは「とりあえず」問題ないだろう。

一方、ワークルームからはWindows自体が排除されることになるので、それほど高い性能は必要ない。 とはいえ、ビデオカードがRX580からRX5700XTになったことで快適性が大幅に上がったのは事実だし、今のワークルームでのエクスペリエンスを支えているのはRX5700XTではある。

だが、ワークルームにおいてクリティカルなのはビデオメモリ量だ。 そして幸いにも、RX580はRX5700XTと同じ8GBを積んでいる。 4kが3枚というディスプレイ環境だが、動作はするだろう。

なので思い切ってビデオカードを外した。買わなければいずれ良いものを買えば良い。 もっとも「買い時ではない」ビデオカードを後回しにできるのは大きいし、エクスペリエンスへの影響としてはP720を使いつづけるよりも、ワークルームのビデオカードをRX580にダウングレードするほうがずっと小さい。

そうした経緯があって、最終的にここからビデオカードを抜いた構成で注文した。

新しいマシン

パーツ 製品
CPU AMD Ryzen 9 5950X
マザーボード GIGABYTE X570S UD
CPUクーラー Noctua NH-U12S redux
メモリ SanMax SMD4-U32G48H-21P-D
ストレージ Corsair MP510B 960GB (移植)
ビデオカード SAPPHIRE NITRO+ RADEON RX 580 8G GDDR5 OC (移植)
ケース SilverStone RL07 (白)
電源 Antec HCG1000 EXTREME

Windows, ストレージ, ビデオカードを注文していないので、ショップからすれば「一式」にはあまり見えないだろう。

なお、今回もArkで注文した。

メインマシンに現在搭載されているRAID0なSSDはこちらのマシンに載せ替えられる。 また、MP510Bが移し替えられるため、B550マシンはP5に戻すことになる。

本来の「理想的」ではないが、その分少し伸びしろがある。 ビデオカードのグレードアップと、SSDのグレードアップだ。

電源は十分な容量があり、ハイグレードなビデオカードに適合する。

SSDに関しては、MP510Bが2世代前の製品であり、性能がそこまで高くないのもあるが、Linuxに2枚を割り当てるとキャッシュを分散させることが可能になる。これによりさらなる性能向上をはかることができる。

今なら、ビデオカードは6900XTを搭載し、SSDはP5 Plusをメインとし、サブに余ったP5を載せると最高になるだろう。

性能レビュー

最強のCPU、5950Xを搭載した新マシン。 ビデオカードは流用なので、CPU性能だけ計測していこうと思う。

今回は本当にCPUだけがアップグレードされた形なので、CPU以外の計測は(体感的な意味を含めて)ほとんどない。 なのであくまでCPUだけの話だということを強調しておきたい。

ソースになるファイルは、Project Cars 3のプレイをRadeon ReLiveで録画したFHD 60FPSの動画で、かなり大きなH.264の動画データである。 これを

ffmpeg -t 120 -i source.mp4 -c:v copy -c:a copy dest.mp4

として2分の動画に切り詰めた。

3700Xと5950Xマシンについては動画はルートファイルシステム上にある。一方、P720はルートファイルシステム上に置くとかなりのハンデになってしまう(SATA SSDをUSB接続している形なので)ため、NTFSだがWindows上に配置することとした。

FPSについては、ffmpegの表示値ではなく、動画が7201 framesであることを考えて、7201 / procsecで算出した(procsecはtimeの出力値による)。

また、今回は前提条件としてLightDMの画面を表示させた状態でログインせずにコンソールに落ちて、コンソール上で実行している。 実行前にCPUガバナーはPerformanceにセットしている。ただし、シングルスレッドで動作するlibvpx-vp9に関してはOnDemandのほうが速い可能性があるため、OnDemandガバナーを使用した。

まずは、xz。time ( xz -z -T0 -q -c PC3source.mp4 > /dev/null )の形。 並列度が非常に高いため、20コア40スレッドのP720に有利な条件。

マシン 時間
5950X 198.65s user 1.15s system 1697% cpu 11.771 total
3700X 217.07s user 1.12s system 1044% cpu 20.897 total
P720 234.91s user 3.09s system 1618% cpu 14.704 total

やはりXZは処理時間自体はかかっているが、20コアあるP720は8コアの3700Xよりも速い。

5950Xは3700Xに対して倍までは速くない。完全に並列化されているのであれば同一性能のコアが倍あるとき、だいたい半分の時間で処理できるはずだが、そこまでではないのは、3700Xが8コアで1044%と仮想スレッドの分が活きているのに対し、5950Xは1697%と実コア数を少し越える程度であった。P720に至っては実コア数にすら届いていない。

xzの実装に改善の余地があるのかもしれないが、期待ほどは伸びていない。 処理速度自体は3700X比109%と、少し速くなっているのがわかる。xzが32スレッドをうまく使えていないのか。

続いて、libx265。time ( ffmpeg -i PC3source.mp4 -c:v libx265 -crf 24 ~/tmp/out.mp4 > /dev/null )~/tmpはtmpfsになっている。並列性はそこそこ高いが、xzと比べるとスレッドパフォーマンスが求められる。

マシン 時間
5950X 2435.09s user 6.45s system 1555% cpu 2:36.96 total
3700X 3281.30s user 6.26s system 1255% cpu 4:21.86 total
P720 5179.08s user 24.59s system 1557% cpu 5:34.04 total

3700XとP720で効率にかなり大きな差が出ている。コア数が多いため、効率ほどの差ではないが、FPSもP720のほうが低い。

5950Xは目立って速い。P720の例を見ればわかるように、x265はコア数があればあっただけ速いというわけではない処理なのだが、userで134%、realで166%とかなり速くなっていることを感じる。 公称では「Zen3はZen2比145%」という話だったが、134%というのはなかなか良い結果だ。realはさらに速いのは、コア数が多いためだろう。

libvpx-vp9。ffmpeg -i test.mp4 -c:v libvpx-vp9 -crf 36 -c:a libopus -b:a 128k ~/tmp/out.webm こちらは基本的にシングルスレッドの計測。 計算時間で考えるならば、コア数をかけて考えたほうが良いただろう。

マシン Time FPS xコア数
5950X 4112.99s user 4.79s system 331% cpu 20:42.97 total 5.79 92.69
3700X 5251.29s user 6.78s system 331% cpu 26:26.93 total 4.53 36.3
P720 9861.55s user 25.51s system 335% cpu 49:04.59 total 2.44 48.91

本命の計測になる。 3700X, P720ともに普段実際に使っているのよりもかなり良い値が出ているが、グラフィカルログインしていないことの影響だろうか。 それもあってほぼ1スレッドしか動いていないため、よりオーバークロックが効いている可能性があり、実際に並列処理するとここまでの値は出ないかもしれない。

この問題は無限に動画があるとしたらコア数でかけた値が大きければ良いのだが、もうひとつの問題として「そのまま動かし続けなければならない時間」というものがある。 これは、duration * (60 / FPS)で求めることができるが、例えば2時間の動画で12だとすると、24時間所要するということになる。 ここでもう一方が倍の24であるならば、その動画の処理に48時間を要する。 問題は「最後の一個」を取ったのが誰かという話で、完了までに追加で24時間を要することになり、長い動画の場合は遅いマシンが加担することが利になるとは限らない。十分に動画の数が多ければこの限りではないが。

FPSでいうと127.8%の向上、userは127.6%、実時間で127.6%速く、だいたい処理効率が127.6%程度良いと考えて良いだろう。 パッと見にはそんなに変わらないようにも見えるが、実際1世代で125%も速くなったらえらいことだし、まして3700Xに対して5950Xは2倍のコアを持っている。

一応、4GamersのHTML5 GAME Benchmarkも試してみる。 これは、ビデオカードの差だけでなく(ウェブブラウザはビデオカードによるアクセラレーションをしているので、ビデオカードの影響が出る)、ディスプレイがFHDか4kかという差もあり、5950Xにはかなり不利な測定。

マシン Score
5950X 19061
3700X 18793

RX580を搭載し、ディスプレイスペースが実に6倍もあるという非常に不利な条件ながら、なんとわずかに3700Xを上回った。 これで高性能なビデオカードを載せるとかなりおもしろいことになるのではないだろうか。

ビデオカードがRX580なのでデスクトップエクスペリエンスはどうしても3700Xに劣る。 一応、3枚の4kデスクトップを描くこと自体は支障がないが、アニメーションはだいぶかくつく。 また、fractional scalingを有効にしたとき、GTKの描画がなされない部品があるという問題もある。 ワークルームのデスクトップという意味では3700Xのほうが明らかに良かった。CPUが速くなった効果を体感することもない。

しかし、こうなるとビデオカードの優劣というより、そもそもRX580が最低限要求される水準を満たしていない低性能なビデオカードではないか、という疑問がわいてくる。 結構いいものを買ったつもりでいたのだが。

そもそも、3700Xと比べるのは少し無理がある。 なぜならば、3700Xに不満があって新調したわけではなく、P720に不満があって新調したのだから、3700Xに対して明確なアドバンテージを持ってなくても構わない、言ってみればもう1台3700Xで組んでも成立する話なのだから。

なので、寝室のマシンがP720から3700Xに変わってどうか、という話をすると、まぁ非常に大きく変わった。

これはワークルームがP720から3700Xに置き換えられているので、当然そのときにも感じていることなのだが、 メインマシンに関しては相応にプロセス数も多く、処理も全体的に重い。 そしてなによりFHD換算6枚分のディスプレイがあるわけで(現在は12枚分になる)、負荷が高いからより性能が要求される状況であった。 一方、寝室のほうはやることがかなり決まっているため、全体的にリソースの消費は絞っていて、ディスプレイもFHD1枚に限られる。

これだけ負荷が小さければ、リソースの少ないマシンでも十分に動作する、と考えられる。 実際、こうした運用は非常に性能が限定された場合でも(特にウェブは重いが)問題なく動作するものだ。 だから、Linuxにおける問題はフリーズなど不快な動作の解消に限られるのではないかと思っていた。

しかし、実際は明らかに解像度の上がったスムーズな動作となった。 これは、30FPSの動画しかなかった頃にはなめらかな動画に見えていたが、60FPSになれると30FPSがカクカクしていることに気づくというようなものに似ている。動作にひっかかりがなくなり、快適性は大きく上がった。

もちろん、ゲーム性能の向上は大きい。P720は「最低限に達していない」と言われ、Redeon Software Centerでは5950Xと6900XTが必要だと言われてしまうのだが、原神の4kプレイが問題なくできることは確認済みなので、寝室の環境で原神をプレイするとひっかかりがなくなって非常に快適だ。 今まではしょっちゅうひっかかって固まっていたので、相当プレイしやすくなった。

また、P720はワークステーションにはありがちなことではあるが、起動・再起動が非常に遅く、WindowsとLinuxの切り替えに時間がかかりすぎる。この点が改善されたのも大きい。

こうしたことから、もともとの目的である寝室に3700Xを持ち込むという点では大成功だった。

余談雑談

増加したマシンの運用

マシン構成は次のようになる。

コンピュータ 場所 用途
X570/5950X ワークルーム メイン計算・執筆・開発
B550/3700X 寝室 娯楽・ゲームB2
P720 寝室 ゲームA3・DTM
A88/7870K リビング 動画視聴・ストレージサーバー

Windows環境はこの限りだと3で(Z400のWindows7もある)、ゲームA, ゲームB, DTMの3つである。 (有効なライセンス数でいうともっとずっと多い)

言い換えると、7870Kと5950XにはWindowsがない。

今回、ストレージは次のように再編成された。

  • 3700Xに搭載されているMP510Bを、そのまま5950Xに移植した
  • 以前3700Xで使用していたP5を、3700Xに戻した
  • 3700Xに搭載されていたSATA SSD RAIDを、そのままの構成で5950Xに接続した
  • P720でLinux用に使われているP1に、DTM用のWindows環境(HDD)を移植した
  • P720に接続されている、DTM用WindowsのHDDを除去した

結果、次のようになる。

コンピュータ プライマリ セカンダリ ストレージ
5950X MP510B 960GB Linux 960GB SSD RAID0
3700X P5 256GB Linux EX920 1TB Windows
P720 P1 1TB Windows MP400 2TB Windows
7870K Force LS Series 3 120GB Linux 8x HDD

ストレージ交換は実際にはかなり複雑になる可能性があった。今回ストレージの追加はしていないが、ストレージの再編成は相当な時間を要する(数日は作業にかかる)ので、あえてそれを避けるためという理由もある。 特に1TBを越えるゲームが入っているP720のWindowsの移植は相当大変だと思われたため、そのままP720を寝室に残すことで作業を大幅に軽減している。

流用という意味では次のようなことである。

  • 5950X用にセットアップせず、3700Xのストレージをそのまま接続した。これにより、NASやSSD RAIDなどの構成をそのまま引き継いで利用できる
  • 3700XはディスクをP5に戻しただけで構成は変更されていない。Windows環境もアプリのインストールなどはほとんど発生しない
  • P720はディスクを変更することなく、Linuxを潰してDTM環境を改善した
  • P720のビデオカードはP400に戻されたが、そこで余ったRX580を5950Xに搭載し、3700Xは変更しなかった

どうしてもゲームのインストールをやっていると、それだけで「数日」かかるし、そのために割と物の大掛かりな出し入れが必要だったりする。単純にファイルのコピーで済むならそこまで大変でもないが、レジストリをどの程度要求されるのか把握するとしたらそれはそれで時間がかかるのでかなり難しい。 今の時点では「寝室に2台おいておく」というのが楽で、今すぐ時間がかからないというメリットに加え、ストレージ容量の圧迫という意味でも軽減できる。いずれ1台に集約するようなタイミング(おそらく、今回組んだマシンが寝室に降りてくるとき)に統合すれば良いだろう。

ちなみに、私は手元のゲームで2TBのディスクが必要な状態(>1TB)だが、DTM環境も2TBのディスクが必要な状態(≦2TB)なので4、Windowsを1環境にまとめるためには4TBのSSDが必要ということになる。システムレベルで使える4TBのSSDは結構高い(XPG SX8100が圧倒的に安いが、それでも7万円くらいする)し、そもそも4TBのPCIe SSDはまだ希少なので現実的に統合できず、少なくともWindowsは2環境必要な状況である。

DTM環境の必要ディスクはそれほど増加しておらず、だいたい一通り揃えたときに2TB〜4TB程度が必要な状況は変わっていない。 一方、ゲームはやっていればそれだけ容量は増え続けるし、容量自体も増加傾向にある。

この点を考えると、いずれSSDの容量が大幅に大きくなることで、ディスクが不足する自体は解消されると考えられる。

だが、もっと考察すれば方法がないわけではない。

ひとつ考えられるのはSATA SSDを使うという方法だ。 ゲームもDTMもディスクアクセス速度はかなり欲しい傾向にあるが、そもそも最近までSSDで運用するのが現実的でなかったDTMのほうはSATA SSDにすることも考えられる。

だが、複数ディスクの1 Windowsで運用可能かは考える必要がある。 DTMソフトウェアはシンボリックリンクやジャンクションを使ったときにうまく動作しない傾向があり、別ディスクに分散させるのが結構難しい。

また、同一の2TB SSDを2台用意し、Fake RAIDを使って4TBとして使うという方法もある。これは悪くない方法だが、最初からその前提で準備する必要があり、あまり気軽な方法ではない。ディスクをすべてWindowsに回す必要があるという点でもやりづらい。

Windowsだと結構難しいな、ということを感じる。

現実的には、保存場所にあまりこだわりのないエロゲーどもをSATA SSDに追いやるのが良いだろう。 スキップ速度が落ちるけど、まぁ仕方ないか。Steamゲーで容量が埋まっているような人は難しいだろうけども。

いずれにせよ、今散らばっているWindows環境をまとめようと考えるなら、最初からその前提で考えて準備する必要があり、おそらく今のP720のように1台はWindowsのために身を犠牲にするようなことが必要になるだろう。 P720はWindowsと比べLinuxは安定しているため、いずれP720がLinuxのみになるときも来るかもしれない。P720のWindowsライセンスは移せないが。

すごくわかりにくい話に聞こえるだろうが、実際頭がこんがらがりながらこのように配置した。

なお、P720からLinuxがいなくなってしまったが、大丈夫。先日ちょうどコンテンツ保管に使っているUSB接続のSSDが容量がいっぱいになったので、これを2TBに移した関係で、1TBのSSDに空きが出た。 この1TBのUSB SSDでLinuxをブートできるようにしており、必要であればP720を(というよりLinuxのいないどのマシンでも)Linuxで使うことも可能だ。 libvpx-vp9の処理速度がかなり遅いため、P720の出番はなかなかないと思うが、並列処理であれば3700Xよりも速いマシンではあるので、活躍するときもあるだろう。

なお、単に「3700XでゲームしているときにLinuxでSNSしたり動画みたりしたい」という話だと、既にIdeaPadがあるためP720は出番がない。

Why 5950X?

現在、ビッグデータを扱う研究は停止しているので、ほぼlibvpx-vp9のためである。

現状、3700Xを用いたlibvpx-vp9の処理は<2fps(1/30)であり、8並列で処理したとしてもかなり時間がかかる。 実際のところ、3700Xでの処理は合計計算量としては間に合っているのだが、計算中は再起動できないという制約はあるため、いささか使いづらい。

5950Xの場合、コア数が単純に倍になるので、仮に依然として<2fpsであったとしても、16並列で実行できるようになることで処理時間は最大で半分まで短縮される。両マシンを併用した場合24並列で処理することが可能なので、最大で1/3まで短縮されるのだ。

現実にはデスクトップでの利用を考慮して、6並列にとどめているが、これが(同様に2コアを余らせて)14並列になるとすると倍よりも多い処理が可能である。

なお、3700Xは瞬間的には処理時間がかかる状態は存在するが、計算時間としては十分に短い。 結果として、大部分の時間CPUは遊んでいる状態になってしまっているので、その意味では5950Xになるとその事態はさらに悪化するだろう。

だが、もうそれは現代のCPU、そしてコンピュータの使われ方における避けられないことだと思ったほうが良い。

現代のCPUは「まっとうな」プログラムにとっては過剰も良いところであり、「怠惰な」プログラムや「おかしな」プログラムや「極端な」プログラムたちがCPUの不足を訴える。 ところが、「おかしな」プログラムの代表格であるウェブブラウザ5や、「極端な」プログラムの代表格である動画変換6は今人々にとって身近なものであり、意識しているか否かによらず大抵の人が日常的に利用している。 さらに言えば多くのウェブで動作するアプリケーションは怠惰であり、必要最小限を逸脱しているどころか、無尽蔵に計算リソースを食いつぶそうとする傾向にある。7

だが、テキストを書くだけならWindows2000世代のマシンでもなんとかなるが8、本当にそれしかできないし、できないことを踏まないように細心の注意を払う必要があり、非常に使いにくい。結局のところ現実において利用する使い方で困らないような性能を確保する必要があり、そうするとどうしたって「上限基準」になる。

例えば年に数回訪れる友人家族とゲームするために使うPCは、普段ゲームなんか一切しなくても少なくともそのゲームがプレイできる必要がある。 そのように「日常利用でストレスがあまりなく」「実際に起こる高い要求もこなすことはできる」というレベルが「実際の必要な性能」として降り掛かってくるし、前者を満たす水準と比べ後者を満たす水準が非常に高いのがよくあることであるために、普段は有り余る使わない性能を蓄えたようなPCを必要とするわけだ。

まぁ、Ryzen、特にZen2以降のRyzenはとんでもない性能を持っているために、普通の人にとっては割とそんなことは気にならなくなった。別に特別に高いPCを買わなくても、普通のPCを買えば十分に有り余る性能を持つようになったためだ。

それは、私でも基本的には変わらない。 実際、研究では途方もなく高性能な計算力が求められ、割と現実離れした費用がかかった。P720においても、研究で使うために盛っていた時期は200万円くらいかかっている。 だが、今や5950Xは私が研究に使う場合においても有り余る性能があると考えられ、さすがにスタンダードグレードで済むようになったとは言えないまでも、PCの範疇で済むようにはなっている。

なのにそれで済まないのだ。その原因が「ゲームを録画したものを、良好な画質を保ちつつ保存していけるサイズにしたい」という割と普通の要求なのが笑ってしまう。 TVを録画したものを消したくない人なんかだともっと大変だと思うのだが。

さらにいえば、libvpx-vp9は現代最速のCPUをもっても超絶遅いという状態にあるにもかかわらず、libaomによるエンコードはその100倍遅いとかいうレベルなので、この問題が解決する見通しはない。AV1に乗り換えることなくVP9を使うというのは、割とアリな選択肢だし(デスクトップキャプチャだとVP9は結構いい圧縮ができる)、その場合はCPUの高速化が進めば速くなっていく。 でもリアルタイム処理するためには「数十倍」というレベルで速くならないといけないわけで、そんな日がくるのだろうかという感じでもある。

動画圧縮に限っていえばAV1のハードウェアエンコーディングが可能になれば、サイズと画質の妥協点でlibvpx-vp9を使うよりずっと速い、ということが起こらなくもないのだが、実際はlibaomを使っても速度重視なチューニングではlibvpx-vp9のレベルにも届かないので、望み薄だろう。

じゃあなぜ5950Xだったかというと

  • たとえThreadripperを選択しても根本的なレベルで問題が解決するわけではない
  • 停止できない時間という意味で3700Xだと週末回しっぱなしでも足りないのでもっとパワーが欲しい
  • 3700Xは伸びがあんまりないのでコア数がもっと欲しい

みたいな感じで現実的なラインでできるだけ性能をもった、というような理由だ。

RL07

Sliver Stoneのケース自体あんまりメジャーではないようだけど、特にRL07は全然話題になってないみたいだ。 日本では、なのかもしれないけど。

Silver Stoneのケースはマニュアルがないとかいう不満はないではないけど、基本的に使いやすくて気に入っている。 なにより、SETA A1に続いてすごくクールなデザインで素晴らしい。

左右ひねったような形をしているけど、それはフロントパネルだけで、内部は特にひねっているわけではない。 ディスクラックはSETA A1は側面2.5 x2、内部2.5+3.5 x2という構成だったけど、RL07は側面2.5 x3、内部3.5/2.5 x3という構成。台数は6と同じで1台だけ3.5に多く振れるようになっている仕組みだけど、マウント方法はRL07のほうがイケてる。

サイズはA1とだいたい一緒。つまり、でかい。

A1と比べるとちょっとだけ使いやすいと思う。 なお、A1のほうが新しい製品なので、USB Type-Cポートがあったり(私の環境だとつながってない)、CITA 4端子の3.5mmになっていたりする。

A1も、「これでどうしてもPCが組みたい!!」と思ってたケースだが、RL07も選択肢の中からコレ、というより、コレはぜひ組みたいと思っていたやつ。 一時期ごてごてしたIn Winのケースにハマっていたけど、最近のIn Winのケースは非常におとなしいデザインなので、Silver Stoneのケースにビンビンきている。 最近のケースはあんまりピンとくるものがない。DP502 FLUXはちょっと組みたいけど。

そういえば、昔はフロントに大量の5.25インチベイがあるケースとかあって、計器類とかいっぱい乗せるのが夢だったりした。 実際、そういう流行りもあったようだ。 最近は5.25インチベイなんかみないな…

ケースは結構流行り廃りが激しいので、今の光るフロントファンがメッシュ越しに見えていて、サイドはガラスというのも古臭さを感じる日も、数年くらいで来るんだろう。 そもそも最近はフロントは閉じていて隙間から光が漏れるほうが人気らしいし。 「間接照明でおしゃれをアピールするラブホみたいだ」とか思ったりもするけれど。

なお、RL07のフロント照明は黒モデルは赤、白モデルは青で固定で、なんと驚きのペリフェラル4pin給電である。 Linuxからの制御を気にしなくてよいのはいいが、ペリフェラル4pinなんか電源についてないよぉ。

また、RL07は塗装が薄く、ちょっと引っ掻いただけで剥げてしまった。 全体的にペラペラでやわく、A1と比べケースの出来はあまり良くない印象だ。

なお、一度組んだあと、3700XのA1と入れ替えを行った。 その理由は、RL07が140mmのリヤファンがひとつだけで、追加できるのもフロントファン3つという構造であり、あまりエアフローが強力ではないため、5950Xと6900XTという構成にした場合にケースの冷却力不足が懸念された。 A1はトップファンが140mmをふたつ装着可能で(ひとつ装着しており)、フロントは200mmファンをふたつ装着している。 RL07はかなり静音なケースなので、そこまで強力な排熱が必要でないならより良い。

結果的にはさらに効果があり、

  • 電源ケーブルの取り回しがギリギリだったが、非常にちょうどよい形に収まった
  • USB Type-C端子はX570S UDにのみあり、A1のフロントType-C端子を活かせる
  • A1用のファン端子がB550 AORUS ELITEでは足りない問題が解消された
  • Antec HCG1000電源の後方のケーブルスペースがRL07では足りない問題が解消された
  • RL07のバックサイドのケーブルスペースが足りない問題が解消された
  • RL07のフロントパネルライトに必要なペリフェラル4ピンが、3700Xの電源にはある

という感じで、なんかキレイに収まった。

CPUラックはルートバン

実は、寝室PCはもともとトラスコのルートバンの上に乗せている。

寝室は6畳の部屋に大きなタンスとダブルベッドがあるものなので、スペースの確保が難しい。 この関係でクリアボックスタワーもルートバンに乗っていて動かせるようになっており、PCも同様である。

20kgをこえるワークステーションが載せられるCPUラックは相当高い(2万円くらいする)が、ルートバンは2000〜3000円程度。 しかも、キャスターの動きは比較にならないほどスムーズで、タイダウンベルトを用いた強力な固定も可能(超かっこわるいけど)。

今回、寝室PCが2台(というか、MX2を入れると3台)になるので、ルートバンを追加した。 ルートバンは連結可能なのだ!!

見た目はあんまりよくないけど、実用性はめっちゃ高い。

実はワークルームも、ディスプレイを載せている巨大なデスクの足はルミナスラックで、デスクもサブデスクもキャスターつき。 サイドデスクは軽量な折りたたみ可能なもので、比較的かんたんに動かせる。 このため、部屋のスペースを最大限有効に使うことができている。

ルミナスラックとルートバンはすごくいい。私にはなくてはならないものだ。

寝室 or ワークルーム

正直にいうとワークルームを最近あまり使っていない。

理由はシンプルで、会社の仕事を終えたらご飯食べて原神やって(原神は寝室でやっている)するともう寝る時間だし、土日は家事をやっていると一日が終わるため、「長時間集中して作業する」ことに特化したワークルームを活かす機会がない。 いや、会社の仕事では使っているけれども。

ただ、そもそもワークルームに(椅子、デスク、ディスプレイなどを含めて)リソースをつぎ込んでいるし、基本的にワークルームのほうが良いものを揃えている。データもワークルームに集約され、回しっぱなしになる計算量の多い作業はワークルームのマシンで行うのが原則だ。

そのため、3700X導入以前は、ご飯時に動画を見るのと、寝る前のSNSくらいが寝室PCの役割で、基本ワークルームのマシン(P720)を使っていた。 当時は寝室マシンはA10で、本当に最低限のことしかできなかった。

しかし、寝室マシンがP720になったことで、だいたいのことはこなせるようになった。 mmutilsの開発でワークルームのマシンがオフラインでもデータをいじれる範囲が広がり、さらに会社に入ったことでワークルームで作業する時間自体が減少した。

結果としてワークルームでPCをいじる時間がほとんどなくなってしまい、これが原神を始めたことで余暇の1, 2時間が消滅してワークルームのマシンを触らなくなり、さらに動画変換で回しっぱなしにすることが増えてもっと触らなくなった。

その後、会社の仕事をワークルームのマシンでできるようにしたためにマシン自体は触るようになったが、というのが現状で、そこで悩ましかったのが、「ゲームやってる寝室のマシンのほうが性能を必要としているのでは?」である。

単純にそれで済むならそれもアリなのだが、動画変換中は再起動が基本的にできないため(mmutilsでできるようにしたが、それでも即時再起動はできないし、場合によっては数十時間できない)、その日はゲームができない、というようなことが起こる。 また、動画変換は発熱も大きく、音も大きいし熱いため、寝室で回すと負担は結構大きいという問題もある。

この問題はずっと頭を悩ませていたのだが、実際に3700Xでプレイしたところ、現在私がプレイしているタイトルをFHDプレイする限り、3700Xはほぼ最高画質でおよそ問題ない(アベレージで60FPS近く出る)ということが分かったため、より強力なCPUを持つ新しいPCはワークルームへ、十分な性能を持つ3700Xを寝室へ、ワークルームのPCはとりあえずはRX580でもそこまで大きく問題はない、という判断に至った。

実際にVP9を回してみて

30%速くなった程度では「速い!」と感じるのは難しいのだが、4〜5日かかるような量を突っ込んでみたが、2日程度で終わったため、総合的にはかなり速い印象を受けた。

短時間で済むというよりも、非常に多くの動画をためた状態で処理できるようになるため、「追いつかない」というとがなくなり、コンピュータを停止できる時間できる時間が長くなる。

そのため、VP9への変換の負担は結構軽減したように感じている。 できればせめて一晩で終わるようになってくれればという気持ちは強いが。