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理想的なディスプレイ構成とグラフィックスについて (要約記事)

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本記事は複数のかなり長くて詳細な記事から、「後悔しないディスプレイ選択はどのようなものか」という点に絞ってまとめたものである。 その理由や考察等、詳細が気になる場合は関連記事を読んでほしい。

前提として、私の使い方を基準にしている。 私は主に以下のような使い方をする。

  • プログラミング
  • 文章執筆
  • SNS
  • 動画鑑賞
  • マルチメディア編集
  • データ分析
  • DTM

ゲームはするにはするが、ゲーム中心で考えているわけではないということが重要な点だ。 なお、プレイするゲームはアクションRPG、リズム、格闘、アクション、アドベンチャー、レースあたりがメイン。FPSは全くやらない。

要点

  • 距離70〜100cm正面の4k 32インチディスプレイが最も好ましい
  • 縦方向を理由に32インチUWQHD曲面も検討の余地がある
  • トータルで考えればVAが良いが、IPSの見栄えの良さも捨てがたい
  • パネル品質はこだわったほうが良い
  • AcerのVAがなかなか良好
  • ハイリフレッシュレートはそれ用にこだわらない限り不要
  • サブでFHDディスプレイがあると超便利
  • FHDは縦に回せるようにアームを使うと良い
  • スケーリングは1.0(ドットバイドット), フォントサイズは18〜24px

ディスプレイについて

32インチを推す理由

32インチディスプレイを70〜100cmの距離で見ると、全体を視界に入れることができる。 映像鑑賞を考えると視界に入らないサイズは明らかによくないので、「最大サイズ」を考えるとこれくらいが良い。

もっと近くにすれば24〜27インチでも良いのだが、27インチでスケーリング1にすると実際かなり疲れる。 表示がスケーリングできないケースというのもあるため、画面サイズがHD未満の画面を出したときの小ささが辛い。 なにより、物理的な小ささのために目を凝らす必要があり、目の負担が大きい。

また、24インチだろうが27インチだろうが、実際の作業時のフォーカス範囲よりは明らかに大きいため、フォーカス範囲にうまく適度な情報量が詰まっていてほしいという状態がある。 32インチは画面を分割して使ったときにも十分な物理サイズを確保しやすく、4kのドット量を活かしやすい。

27インチを視界にちょうど収めるための距離は40cmくらいで、70cmまで離すとドットバイドット時にドットが小さく感じられる。 適性距離は50cmくらいだが、50cmだと近すぎてフォーカスがしんどいし、目にも悪い。

32インチを司会にちょうど収めるための距離は45cmくらい。 適正距離が70cmくらいになり、1mまで離れてもドットバイドットで「やや小さい」程度に収められる。

ディスプレイの距離と使い勝手が32インチがちょうどいい。 大きく見たいか全体を見たいかを椅子の引き具合で簡単に調整できる範囲にあるのもいい。 また、効率的にもスペースが大きく、表示もほどほどに大きい32インチ4k 1枚でやるのが一番良い。ただし、後述するように、状況によってサブがあったほうが良い場面もある。

32インチウルトラワイドについて

32インチのウルトラワイドは、横方向は37〜39インチ程度と同等、縦方向は27インチと同等というものである。

UWQHDの画面サイズにうまく表示できないコンテンツが多く、横方向を視界に収めるのが難しいことから、使い勝手はあまりよくない。 しかし、左右に分けてデュアルディスプレイが一体になっているような感覚で使うのであればかなり良い。

ウルトラワイドを検討すべき最大の理由は縦方向である。 32インチの16:9ディスプレイはかなり大きいため、設置の高さが不足することも懸念されるし、なにより上にはマウントしにくい。 例えば上側にウェブカメラを設置するとかなり角度がついてしまうし、マイクを設置するにも口との角度の差が大きい。

ウルトラワイドであればおおよそ望ましい位置に配置できる。

ディスプレイアーム、キャスター付きデスク、チェアの配置など何らかの工夫でディスプレイとの距離を可変にできるようにしておかないと、利用目的の違いを吸収できない。

VA

色鮮やかなIPS液晶は魅力的だが、総合的には良質なVAパネルのほうが良いと感じる場面が多い。 映像・画像鑑賞などが主体であればIPSのほうが良いだろう。

VAであれIPSであれ、よくないパネルはほんと良くないので、良いパネルを選択したい。 あまり安いディスプレイは避けたほうが良いが、安価ながら質の良いパネルの製品も存在している。

VAはコントラスト比の高さを特徴として挙げられることが多いが、一般的にコントラスト比が高くなるような設定がデフォルトではないし、コントラスト比の高い設定が無理なくできるとは限らない。 Acer(Aopen)のディスプレイは「ブラックレベル」という設定項目があり、簡単に調節できるのがとても良い。

ドットバイドット

現代においてはPC用ディスプレイの解像度差は5倍くらいあるため、その差を吸収するということが必要になる。そのための技術がスケーリングだ。仮に4kディスプレイでスケーリング2.0の場合

  • アプリケーションから見るとFHDのディスプレイに見える
  • ディスプレイから見ると2倍のピクセルを使って描画しているように見える

である。

だが、アプリケーションから見たときにディスプレイのサイズそのものが違って見えるというのが大きな問題で、4k映像が出力できるアプリケーションが、ディスプレイに合わせたFHDでしか出力できないとか、あるいは4kで出力しても表示までにFHDにダウンされてしまうといったことになりやすい。 論理的なサイズではなく物理的なサイズをもとにして出力できるアプリケーションもあるが、アプリケーションによって問題があったりなかったりするというのは扱いにくい。 最近はWindowsのゲームでも、ディスプレイモードを制御できるフルスクリーンではなく、ボーダーレスフルサイズウィンドウ(疑似フルスクリーン)を使うものが増えているのも一因。

また、アプリケーションが認識するレイヤーによって、座標やピクセルサイズがズレることによる意図せぬ挙動が発生することがある。

スケーリングを用いないドットバイドットであればこうした問題が生じず、扱いやすいため、現状ではドットバイドットで表示する前提でディスプレイのサイズや距離を考えるほうが良い。

将来的にはスケーリングに関わるあらゆる問題が解消される可能性もあるが、現状ではそうなっていないこと、たとえ問題が解消されてもディスプレイの性能・機能の理論値で機能させるためにはドットバイドットであったほうが都合が良いことから、ドットバイドット前提で考えるのが良い。

4kの価値

FHD対比だと4kはピクセル数が倍。サイズが同じなら解像度が倍。

ドット感を感じないためにはだいたい140dpiくらい欲しく、逆に100dpiを下回るとドット感が気になりやすくなっていく。 この観点では、デスクトップ用ディスプレイのサイズではFHDでは解像度不足になりやすく、21.5インチでギリギリ100dpiを越える程度。4kにすれば綺麗でなめらかに見える。 ドット感は脳の負担にもなるので、その意味でも大きい。

また、日本語の文字(漢字)を問題なく認識できる解像度で表示するには18pxは必要で、FHDの場合18pxが占めるサイズが大きい。 不完全な文字は脳の処理コストが高く疲労の原因になるし、物理的に大きすぎる文字はそれはそれで読みづらい。 4kにすることで物理サイズを抑えつつ、文字描画にドットを割くことができる。

24インチのWQHD(2560x1440)もバランスは良いが、タイリングしたときに割けるドット数とアプリケーション側の適応性の問題から、微妙に使いにくさが出ることもある。 このため、4kが良い。

DTMや動画編集ではUIのサイズと表示量という問題もあり、4kにするとかなり利便性が上がる。

なお、4kで24〜32インチで十分な解像度を持っているため、8kの価値はかなり低いと思われる。

FHD

ドットバイドットで表示する前提だと、FHD、あるいはそれ以下の空間を前提に作られているコンテンツに適さないことがある。 もちろん、4kでもクォータータイルで表示できるが、かなり小さいディスプレイを使っているような表示になってしまう。

4kの全画面を利用しながら情報も表示しておきたいとか、4k側の画面をキャストしながら別画面でキャスト内容をコントロールしたいとかいうこともあるため別ディスプレイが欲しいのだが、そのディスプレイをFHDにしておくと小さい空間を前提にしたアプリケーションを4kディスプレイに出すのより大きく表示できるので、かなり使い勝手が良い。

そのほかにも、4kのキャストは現状でもかなり負担が大きく、回線帯域的にも4k配信は難しいため、FHDはキャストソースとしての利便性という点でも優れている。

このことから、4kディスプレイをメインにして、FHDディスプレイをサブにするというのは最高の組み合わせになる。

FHDディスプレイのサイズは、24インチが優秀。

縦ディスプレイ

現代ではスマートフォンを前提にしたコンテンツなど、縦画面を前提にしたものがかなり多く、特にイラストの類はポートレイトレイアウトが多い。

こうしたコンテンツの表示は縦画面だと使いやすいのだが、逆にPCを前提にした画面だとFHDの縦、つまり横1080pxだと不足であることが結構ある。

このため、サブディスプレイのほうを簡単に回せるようにしておくと便利。

ディスプレイアームを使うのだが、ディスプレイアームでも

  • 回しやすいかどうか
  • 頻繁にまわして大丈夫かどうか
  • 回したときに安定するかどうか

という違いがあるので、製品を注意深く選ぶ必要がある。 私が一番いいと思っている製品は、すでに販売されていないためここでは紹介しない。

ハイリフレッシュレート

60Hzを越えるハイリフレッシュレートディスプレイは、ゲーミングディスプレイを中心に結構増えている。 が、基本的には気にしなくていいと思う。

ハイリフレッシュレート自体は感じ取ることは容易で、特にマウスカーソルの動きがなめらかになるが、ゲームプレイで試した限り、音ゲーのノーツの残像感が減るということもなかったので、ハイリフレッシュレートに価値を見出すのは難しかった。 TNディスプレイなどでハイリフレッシュレートに特化したディスプレイを使えば別かもしれないが、そのようなディスプレイを選択するデメリット(価格の高さやグラフィックの要求の高さを含む)を飲めないように思えるため、そこまでこだわれる(例えば有機ELモデルを買うとか)のでない限りは結局使わない機能だと思う。

スムーズスクロールができる場合は、多少酔いにくさに貢献するが、残像感があまり変わらないのでやはり微妙。反応速度至上みたいな状況でないとメリットを感じにくい。